眼瞼下垂で見られる症状

「まぶたが重くて、いつも眠そうに見える」——そう声をかけられて受診される方が少なくありません。眼瞼下垂は、上まぶたを持ち上げる力が弱まり、まぶたが目にかぶさって開きにくくなった状態です。見た目の変化だけでなく、視野が狭くなったり、まぶたを持ち上げようとおでこの筋肉を使い続けることで頭痛や肩こりが慢性化したりすることがあります。次のような変化に心当たりがあれば、眼瞼下垂が進んでいるサインかもしれません。

先天性と後天性の違い

「昔からまぶたが重かった」という方と、「最近になって下がってきた」という方とでは、実は原因が違います。眼瞼下垂は、生まれつきまぶたを持ち上げる筋肉の発達が不十分な「先天性」と、加齢や日常の習慣によって後天的に起こる「後天性」に分けられます。先天性は乳幼児期から症状がみられ、片目だけ下垂が強い場合は視力の発達を妨げて弱視につながることがあるため、早い段階での判断が重要です。気になる様子がある場合は、早めに眼科でご相談ください。

当院の診察でお会いする眼瞼下垂の多くは、成人になってから進行する後天性のものです。次に説明する腱膜性眼瞼下垂が、その代表的な原因にあたります。

眼瞼下垂の主な原因

「特にケガをした覚えもないのに、なぜまぶたが下がってきたのだろう」と不思議に思う方もいます。後天性の眼瞼下垂で最も多いのが、腱膜性眼瞼下垂です。まぶたを持ち上げる眼瞼挙筋と、まぶたの軟骨をつなぐ腱膜が、加齢や長年のコンタクトレンズ使用、目をこする癖などによって伸びたり外れたりすることで起こります。筋肉そのものの力は保たれていても、その力がまぶたにうまく伝わらなくなるため、目が開きにくくなるのです。

似た見た目の症状に、まぶたの皮膚そのものがたるんでカーテンのように垂れ下がる「眼瞼皮膚弛緩症」があります。原因も治療のアプローチも眼瞼下垂とは別の病態なので、診察でどちらに当てはまるかを見極めていきます。

治療の選択肢(点眼治療・手術)

「手術しか方法はないのでは」と思われがちですが、近年、点眼薬による治療という選択肢も加わりました。診察で原因と程度を確認したうえで、点眼治療・手術のいずれか、または段階的な組み合わせをご提案します。

点眼治療という新しい選択肢

軽度から中等度の後天性眼瞼下垂に対しては、点眼薬「アップニーク®ミニ点眼液0.1%」による治療を行っています。まぶたの裏側にある、もう一つのまぶたを持ち上げる筋肉「ミュラー筋」を収縮させることで、上まぶたを引き上げる薬です。1日1回・1滴の点眼で、手術を伴わずにまぶたの開きが改善するため、手術に抵抗がある方、全身状態などにより手術が難しい方、軽度の下垂の方の選択肢になります。

アップニーク®ミニ点眼液0.1%は薬価基準に収載されておらず、保険適用外の自由診療です。費用は10本の小分けで2,000円(税込)、30本1箱で5,100円(税込)です。主な副作用として、眼瞼のかゆみ、結膜充血、点状角膜炎、目のかすみ(霧視)、まぶたのむくみなどが報告されていますが、いずれも発現頻度は1%未満とされています。心臓や血管の病気がある方、妊娠中・授乳中の方は使用前にご相談ください。効果は点眼を続けている間だけ持続するもので、中止すると数日程度でまぶたの開きは元の状態に戻ります。根本的な改善を目指す治療ではないため、必要な間は毎日使用し続けていただく治療になります。なお、6か月を超える連続使用における有効性・安全性は確立していないため、長期にわたって使用を続ける場合は、定期的に診察で効果と副作用を確認しながら継続の可否を判断します。

手術による治療

「点眼薬を試したけれど、思うように改善しなかった」「根本的に治したい」という場合は手術を行います。原因によってアプローチが異なります。

腱膜性眼瞼下垂に対する手術(眼瞼挙筋前転術)

伸びたり外れたりした腱膜を、まぶたが機能的にしっかり上がる位置へ縫い直す手術です。まぶたを開く力そのものを立て直すことを目的とした、機能改善のための治療です。

皮膚のたるみに対する手術(眉毛下切除など)

皮膚のたるみが原因の場合は、たるんだ皮膚を切除します。まつ毛のすぐ上を切る方法のほか、眉毛のすぐ下のラインに沿って切除する「眉毛下切除」があり、まぶたの自然な厚みのグラデーションを保ちながらたるみだけをすっきりさせられるため、術後の腫れも比較的少なく、印象が変わりすぎないという利点があります。

「手術は怖くないですか」と聞かれることもありますが、出血・感染・左右差・修正の必要性といった一般的なリスクは、どの手術にも伴うものです。腫れが落ち着くまでの期間や通院の頻度には個人差があるため、詳しくは診察時に医師へご相談ください。

保険診療としての治療方針

当院で行う眼瞼下垂の治療は、視野が狭くて見えにくい、まぶたが重くて生活に支障が出ているといった機能的な問題を改善するための医療行為です。

「二重にしたい」「目の形を左右対称に整えたい」といったご相談を受けることもありますが、そうした審美(美容)目的の手術・治療は当院では行っておりません。あらかじめご了承ください。

治療法保険の適用
手術(機能改善目的)視野狭窄など機能的な支障が確認された場合は、保険診療の対象となります。判定は診察による評価が必要です。
点眼治療(アップニーク®ミニ点眼液0.1%)薬価基準に収載されていないため、目的にかかわらず保険適用外(自由診療)です。
美容目的の手術・治療当院では実施しておりません。

診察ではまず見え方や生活への支障の程度を確認し、保険診療の対象となるかどうかも含めてご説明します。

よくあるご質問

Q
眼瞼下垂と眼瞼皮膚弛緩症はどう違いますか?
A

原因が異なります。眼瞼下垂はまぶたを持ち上げる腱膜のゆるみが原因で、眼瞼皮膚弛緩症はまぶたの皮膚自体がたるむことが原因です。見た目が似ていても治療のアプローチが変わるため、診察でどちらに当てはまるかを確認します。

Q
眼瞼下垂の手術は二重まぶたの手術と同じですか?
A

異なります。眼瞼下垂の手術はまぶたを開く力を立て直すことを目的とした医療行為です。見た目を二重にする、左右対称に整えるといった審美目的の手術は当院では行っておりません。

Q
点眼治療だけで様子を見ることはできますか?
A

「まずは点眼だけで様子を見たい」という方もいらっしゃいます。軽度から中等度であれば可能です。点眼薬で開きにくさが改善し、生活への支障が減れば継続していただけます。ただし点眼をやめると効果も元に戻るため、根本的な改善を希望される場合は手術が選択肢になります。

Q
眼瞼下垂を放っておくとどうなりますか?
A

視野の狭さや肩こり・頭痛が徐々に強くなることがあります。無意識にまぶたを持ち上げようとおでこの筋肉を使い続けるため、表情のクセにもつながります。見えにくさを感じたら、進行の程度を確認するために一度診察を受けてください。

Q
子どもの眼瞼下垂も診てもらえますか?
A

生まれつきの眼瞼下垂(先天性)は、視力の発達に影響することがあり、大人の場合とは異なる判断が必要です。気になる場合は早めにご相談ください。

関連ページ

院長 野村 圭子

眼科を担当。白内障や緑内障などの一般眼科診療から、小児眼科・アレルギー性結膜炎など幅広く対応します。

保有資格・略歴

  • 昭和63年 東京女子医科大学卒業・同大学眼科医局入局
  • 平成11年 米国ロチェスター大学角膜移植部留学
  • 平成13年 東京女子医科大学眼科准講師
  • 日本眼科学会専門医

まぶたの重みや見えづらさに心当たりがある方は、視野への影響の有無を確認するためにも一度ご相談ください。