ぶどう膜炎とは
ぶどう膜は、虹彩・毛様体・脈絡膜という3つの組織の総称です。血管が豊富に集まっているため、体のほかの部位で起きた免疫の異常や感染症の影響を受けやすい性質があります。
炎症が起こると、目の前方に濁りが出て視界がかすんだり、奥にある網膜にまで炎症が波及して深刻な視力障害につながったりすることがあります。
片目だけに症状が出ることもあれば、両目に同時に炎症が起こることもあります。原因によって経過や治療方針が大きく異なるため、早い段階で原因を絞り込むことが重要です。
原因
ぶどう膜炎の原因は大きく分けて「全身の免疫異常(自己免疫疾患)」「感染症」「原因不明」の3つに分類されます。原因を特定するためには、血液検査やレントゲン検査など全身の精密検査が必要です。
免疫異常(非感染性)
本来は体を守るはずの免疫システムが、自分の組織を攻撃してしまうことで炎症が起こります。日本では次の3つが「3大ぶどう膜炎」として知られています。
| 特徴 | |
|---|---|
| サルコイドーシス | 全身の臓器に肉芽腫(結節)ができる原因不明の病気です。肺やリンパ節など、目以外の臓器に病変が見つかることもあります。 |
| 原田病 (Vogt-小柳-原田病) | メラニン色素細胞を免疫が攻撃する病気です。頭痛や耳鳴りなど耳・神経の症状から始まり、両目が同時に強い炎症を起こします。 |
| ベーチェット病 | 目、口の中の口内炎、皮膚の症状、外陰部の潰瘍を4大症状とする全身の炎症性疾患です。 |
感染症
細菌、ウイルス、真菌(カビ)、寄生虫などが目の中で増殖することで炎症を起こします。主な原因として次のようなものがあります。
- ヘルペスウイルス
- 巨細胞ウイルス(CMV)
- 結核
- 梅毒
- トキソプラズマ
原因不明(特発性)
血液検査や画像検査など徹底的な検査を行っても、全体の約3〜4割は原因が特定できない「特発性ぶどう膜炎」となります。原因が分からないままでも、炎症を抑える治療は行えます。
主な症状
炎症がぶどう膜の前側(虹彩など)に強いか、後ろ側(脈絡膜・網膜など)に強いかによって、症状の出方が異なります。片目だけの場合もあれば、両目に症状が出ることもあります。
- かすみ目(視力低下):目の中に炎症細胞(濁り)が飛び散り、霧がかかったように見えます
- 飛蚊症:目の前に虫や糸くずのようなものが飛んで見えます
- 目の痛み・まぶしさ:光を見ると痛みを強く感じたり、異常にまぶしく感じたりします
- 充血:黒目の周囲からじわっと広がる、やや紫がかった充血(毛様充血)が見られます
頭痛や耳鳴りを伴って両目が同時に充血する場合や、口内炎・皮膚の症状・関節の痛みなど目以外の症状もあわせて出ている場合は、全身の病気が関わっている可能性があります。思い当たる症状があれば、早めに眼科を受診してください。
診断までの流れ
ぶどう膜炎は原因によって治療方針が大きく異なるため、目の状態を確認する検査と、原因となる全身疾患を調べる検査をあわせて行います。
症状の経過をうかがったうえで、細隙灯顕微鏡で前房内の炎症細胞や虹彩の状態を確認します。
網膜・脈絡膜など目の奥にも炎症が及んでいないかを確認します。
サルコイドーシス、原田病、ベーチェット病、感染症など、原因となりうる全身の病気を調べるため、血液検査やレントゲン検査などを行います。
検査結果をもとに局所治療・全身治療の内容を決め、全身の病気が強く疑われる場合は専門の医療機関と連携します。
治療
ぶどう膜炎の治療は「目の炎症を抑えて視力を守ること」と「原因となっている全身の病気にアプローチすること」を同時に進めます。症状が落ち着いた後も再発しやすいため、長期的な経過観察が必要です。
局所治療(目へのアプローチ)
目の炎症を直接抑えるための治療です。
| 目的 | |
|---|---|
| ステロイド点眼・眼軟膏 | 炎症を抑えるための基本の治療です。重症の場合は、目の周りに直接ステロイドを注射(結膜下注射など)することもあります。 |
| 散瞳薬点眼 | 虹彩と水晶体が癒着し、続発緑内障につながるのを防ぐとともに、瞳を広げて痛みをやわらげます。 |
全身治療(原因に応じたアプローチ)
原因となっている病気に応じて、全身への治療をあわせて行います。
- 感染症が原因の場合:原因菌に対応する抗生剤や抗ウイルス薬を点眼・内服・点滴で使用します
- 免疫異常が原因の場合:ステロイドの内服(全身投与)、免疫抑制薬、生物学的製剤(分子標的薬)などで全身の免疫をコントロールします
サルコイドーシス、原田病、ベーチェット病など全身の病気が原因と考えられる場合は、当院での検査に加えて、膠原病内科などの他科や、ぶどう膜炎の専門外来がある医療機関と連携して診療を進めます。
よくあるご質問
感染症が原因の場合を除き、ぶどう膜炎そのものが人にうつることはありません。感染症由来かどうかは検査で判断します。
サルコイドーシスやベーチェット病などが原因の場合、炎症が落ち着いた後も再発しやすい特徴があります。症状がなくなっても自己判断で通院をやめず、指示された間隔での経過観察を続けてください。
免疫異常や感染症が原因の場合は、目だけでなく全身の状態を確認する必要があります。血液検査やレントゲン検査などの結果によっては、内科や膠原病内科などとの連携が必要になることもあります。
炎症が慢性化・反復すると、白内障や緑内障、網膜の障害など二次的な合併症につながることがあります。視力を守るためにも、早期の受診と治療の継続が重要です。
原因が特定できない「特発性ぶどう膜炎」であっても、炎症を抑える局所治療は行えます。原因不明のまま治療を続けながら、経過をみて追加の検査を行うこともあります。
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院長 野村 圭子
保有資格・略歴
- 昭和63年 東京女子医科大学卒業・同大学眼科医局入局
- 平成11年 米国ロチェスター大学角膜移植部留学
- 平成13年 東京女子医科大学眼科准講師
- 日本眼科学会専門医
目のかすみや飛蚊症、充血が続く場合や、頭痛・耳鳴り・口内炎など目以外の症状もあわせて出ている場合は、早めにご相談ください。