麦粒腫と霰粒腫の見分け方
まぶたが腫れてくると、「これって、ものもらいかな」と真っ先に思う方がほとんどだと思います。実は「ものもらい」はひとつの病気ではなく、細菌感染による麦粒腫と、脂の腺の詰まりによる霰粒腫という、原因の違う2つをまとめた呼び方です。
見分けるいちばんのポイントは、痛みがあるかどうか。麦粒腫は急性の炎症のため、赤み・腫れ・痛みが数時間から1日ほどで一気に出てきます。
一方の霰粒腫は、マイボーム腺という脂の腺が詰まってできる「しこり」で、触るとコリコリしていても、基本的には痛みません。ただし霰粒腫に細菌感染が加わる「化膿性霰粒腫」になると赤く腫れて痛むようになり、麦粒腫との見分けが難しくなります。
下の表に、それぞれの特徴をまとめました。
| 麦粒腫(ばくりゅうしゅ) | 霰粒腫(さんりゅうしゅ) | |
|---|---|---|
| 原因 | 黄色ブドウ球菌などの細菌感染 | マイボーム腺の詰まりによる分泌物の貯留 |
| 主な症状 | 赤み・腫れ・痛み、進行すると膿 | 痛みのない硬いしこり、ゴロゴロ感 |
| 治療 | 抗菌点眼・眼軟膏、重症例は内服・切開排膿 | 点眼・眼軟膏、温熱療法、大きい場合は切開 |
麦粒腫(細菌感染による急性の炎症)
「まぶたが赤くなって、人に見られるのが恥ずかしい」というお声を、診察室でもよくお聞きします。麦粒腫の原因は、黄色ブドウ球菌など誰の肌にもいる常在菌です。これがまぶたのフチにある汗腺・脂腺やまつ毛の根元に入り込んで炎症を起こします。
寝不足やストレスで体の抵抗力が落ちているときや、目をこすった手で触れたことがきっかけになりやすく、まぶたの一部が赤く腫れてまばたきのたびにズキズキし、かゆみを伴うこともあります。
進行すると、腫れた部分に膿が見えてきます。
治療の基本は、抗菌薬の点眼と眼軟膏です。炎症が強いときは、抗生物質の飲み薬を併用することもあります。
膿が溜まって破れそうな場合は、切開して膿を排出する処置を行います。切開と聞くと身構えてしまう方もいらっしゃいますが、膿を出し切ったほうが痛みが早く落ち着くことも少なくありません。
霰粒腫(マイボーム腺の詰まりによるしこり)
痛みがないのに、しこりだけがずっと気になって、鏡でつい確認してしまう。霰粒腫にはそんな特徴があります。まぶたの中にある脂の腺、マイボーム腺が詰まり、古い脂などの分泌物が溜まって肉芽腫という「しこり」ができる病気です。
体質や脂っこい食事の摂りすぎ、ストレス・寝不足による皮脂分泌の乱れ、アイメイクの残りで出口がふさがれることなどが関係しています。
まぶたの腫れ、ゴロゴロした感じ、はっきり触れる硬いしこりが主な症状で、痛みを伴わないのが特徴です。
治療は、炎症を抑える点眼薬・眼軟膏と、自宅での温熱療法が中心になります。しこりが大きく自然に吸収されない場合は、切開して溜まった内容物を取り除きます。
しこりを自分でつぶしたくなる気持ちはよく分かりますが、無理に押し出すと炎症が広がることがあります。気になるときは、そのまま診察で状態を確認しましょう。
マイボーム腺のトラブル
「マイボーム腺」という名前を聞くのは初めて、という方がほとんどだと思います。まぶたのフチには、脂を分泌するマイボーム腺という腺が、上まぶたに約20〜30個、下まぶたに約35個並んでいます。
ここから出る脂が涙の表面を覆い、涙の蒸発を防ぐことで、目の潤いを保っています。
このマイボーム腺にトラブルが起こると、マイボーム腺炎とマイボーム腺梗塞という2つの病態につながります。
マイボーム腺炎
「押すと痛む」「まぶたのフチが赤い」という症状で来院される方に多いのが、このマイボーム腺炎です。マイボーム腺に細菌が感染して急性の炎症が起きた状態で、麦粒腫に近い病態です。
細菌感染やマイボーム腺の詰まり、アイメイクの落とし残しといった不衛生な状態が原因になります。まぶたのフチの赤み・腫れ、局所的な痛み、押すと痛む圧痛が特徴です。
治療は抗菌点眼薬・抗菌眼軟膏に加え、アイシャンプーなどによる目元の洗浄を行います。
マイボーム腺梗塞
「まぶたの裏に白い点みたいなものがある」「目薬をさしてもゴロゴロが取れない」という方は、マイボーム腺梗塞かもしれません。マイボーム腺の出口が、固まった自分の脂で完全に詰まってしまった状態です。
加齢による機能低下や体質、アイメイクによる出口の閉塞、脂質の多い食事が背景にあります。
まぶたのフチや裏側に白い点・黄色い塊が見える、ゴロゴロする、脂が出なくなることで涙が蒸発しやすくなりドライアイが悪化する、といった症状が出ます。
治療は温熱療法で脂を柔らかくしたうえで、専用器具を使って詰まった脂を直接押し出す処置(マイボーム腺圧出)を行います。
IPL治療(マイボーム腺機能不全・ドライアイへの光治療)
「目薬をずっと続けているのに、ゴロゴロ感やドライアイがなかなか良くならない」。そんな方に知っていただきたいのが、IPL(Intense Pulsed Light)治療という光治療です。
特定の波長の光をまぶた周辺の皮膚に照射する治療で、美容皮膚科のシミ治療で使われている技術を眼科領域に応用し、マイボーム腺機能不全の改善をめざします。当院で使用しているLUMENIS社製OptiLight M22は、マイボーム腺機能不全・ドライアイへの適応を含めて日本国内で医療機器承認を取得している機種です。
期待できる働きは、次の4つです。
- 脂の溶解・排出促進:光の温熱効果で、奥に詰まった古い脂を溶かし、排出しやすくします
- 炎症の抑制:まぶたのフチで異常に増えた毛細血管を収縮させ、慢性的な炎症を抑えます
- 細菌・ダニの減少:マイボーム腺炎の原因菌や、まつ毛のダニ(デモデックス)を減らし衛生状態を整えます
- 涙の質の改善:正常な脂の分泌を促し、涙が蒸発しにくい状態をめざします
目薬を使ってもドライアイがすっきりしない方、ものもらいやマイボーム腺梗塞を繰り返す方、目のゴロゴロ感や疲れが続く方に向いている治療です。
IPL治療は保険が適用されない自由診療で、費用はお試し初回5,500円(10%税込)、2回目以降6,600円(10%税込)です。
施術は複数回に分けて行うのが一般的です。標準的な施術回数や間隔は、まぶたの状態や症状の程度によって異なりますが、目安として1クール4回ほど、4週間に1回程度の間隔で行います。詳しくは診察時にご説明します。
主なリスク・副作用として、施術後の一時的な赤み・ほてり、まれに色素沈着などが挙げられます。詳しい施術の流れはIPL治療のページでご紹介しています。
ご自宅でできるホームケア
まぶたのトラブルは、日頃のちょっとした習慣で予防や改善が期待できます。次の3つを、日々の生活に取り入れてみましょう。
1日10〜15分ほど、市販のホットアイマスクや温かいシャワーで目元を温めてみましょう。詰まった脂が溶けて、マイボーム腺の通りがよくなります。
まつ毛の根元に残ったメイクや皮脂の汚れは、目元専用の洗浄剤で落としましょう。マイボーム腺の出口を清潔に保てるので、麦粒腫やマイボーム腺炎など細菌感染の予防にもつながります。
まつ毛の内側の粘膜部分(インライン)にアイライナーを引くと、マイボーム腺の出口をふさいでしまいます。メイクは出口を避けて行い、クレンジングも丁寧に行いましょう。
受診の目安
「これくらいなら様子を見ていていいのかな」と迷う方も多いと思います。まぶたが腫れて痛む、触るとコリコリしたしこりがある、目がずっとゴロゴロする。
こうした症状は自然に軽快することもありますが、化膿や炎症の悪化、繰り返しによって通院が必要になることもあります。
自己判断で様子を見すぎないことが、早く楽になる近道です。気になる症状があれば、早めに眼科を受診しましょう。
よくあるご質問
軽度の麦粒腫であれば、数日で自然に軽快することがあります。ただし化膿が進むと、切開が必要になる場合もあります。霰粒腫も自然に吸収されて小さくなることがありますが、しこりが大きい、または長期間残っている場合は、切開による処置を検討します。
麦粒腫やマイボーム腺炎は、誰の肌にもいる常在菌が原因のため、通常は人から人へうつることはありません。ただし目をこすった手で他の部位に触れると、細菌が広がることがあります。こまめな手洗いを習慣にすると安心です。
自己判断でつぶすのは避けましょう。無理に押し出そうとすると、炎症が悪化したり周囲に広がったりすることがあります。しこりが気になる場合は受診し、必要であれば切開による処置を行います。
自由診療のため、診察でまぶたやマイボーム腺の状態を確認したうえで適応を判断します。費用や施術内容は診察時にご説明します。
繰り返す場合は、マイボーム腺機能不全が背景にあることが多く、温熱療法やアイシャンプーといった日頃のケアに加え、IPL治療が選択肢になることがあります。繰り返す頻度が高い方は、一度診察でマイボーム腺の状態を確認しましょう。
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院長 野村 圭子
保有資格・略歴
- 昭和63年 東京女子医科大学卒業・同大学眼科医局入局
- 平成11年 米国ロチェスター大学角膜移植部留学
- 平成13年 東京女子医科大学眼科准講師
- 日本眼科学会専門医
まぶたの腫れやしこり、繰り返すものもらいでお困りの方は、お気軽にご相談ください。