流行性角結膜炎・咽頭結膜熱とは
目が真っ赤になって目やにがどんどん増えていく、そんな状態で来院される方によくお会いします。流行性角結膜炎(はやり目)と咽頭結膜熱(プール熱)は、どちらもアデノウイルスというウイルスが原因で起こる結膜炎です。症状の重さだけでなく、うつさない工夫が治療と同じくらい大切になる点が、ほかの結膜炎との大きな違いです。
流行性角結膜炎は、目の症状(強い充血・目やに・涙)が中心で、黒目(角膜)にまで炎症が及ぶことがあるため「角結膜炎」と呼ばれます。一方の咽頭結膜熱は、目の症状に加えて、発熱とのどの痛み(咽頭炎)を伴うのが特徴で、夏場にプールを介して子どもの間で広がった歴史から「プール熱」という通称がつきました。
細菌性の結膜炎や、うつりにくいタイプの結膜炎については角膜感染症・結膜感染症のページでご紹介しています。ここでは特に感染力が強く、周囲への対応が欠かせない2つの病気を中心に見ていきます。
2つの病気の違い
「はやり目とプール熱、結局どこが違うのですか」というご質問をよくいただきます。同じアデノウイルスが原因でも、症状の出方や、学校・職場を休む期間の考え方が変わってきますので、次の表で見比べてみましょう。
| 流行性角結膜炎(はやり目) | 咽頭結膜熱(プール熱) | |
|---|---|---|
| 主な症状 | 強い充血、大量の目やに、涙、まぶたの腫れ | 発熱、のどの痛み、結膜炎(目の充血・目やに) |
| 発熱 | 通常は伴わない | 高い熱を伴うことが多い |
| かかりやすい年代 | 年齢を問わず | 乳幼児・学童に多い |
| 出席・出勤停止の考え方 | 感染のおそれがないと医師が認めるまで | 主要症状が消えた後2日を経過するまで |
主な症状と経過
目のゴロゴロした違和感に気づいたら、翌日には真っ赤になっていた、というお子さんも少なくありません。最初は片方の目だけに症状が出て、数日のうちにもう片方にもうつり、両目とも赤くなることが多くみられます。水っぽい目やにや涙が増え、まぶたが腫れることもあります。ウイルスに触れてから症状が出るまでの潜伏期間はおよそ1〜2週間とされ、症状が出る前後の時期にも周囲にうつす力を持っています。
次のいずれかに当てはまるときは、様子を見ずに早めに眼科を受診してください。
- 目の充血や目やにが1〜2日で急に強くなった
- 片目から始まり、もう片方の目にも広がってきた
- 家族や身近な人に、はやり目・プール熱と診断された人がいる
- 目の症状に加えて、発熱やのどの痛みがある
感染力の強さと感染経路
「なんでこんなにうつりやすいのですか」と驚かれる方が多いのですが、アデノウイルスによる結膜炎は結膜炎の中でも特に感染力が強い点が最大の注意点です。うつり方の中心は接触感染で、患者さんの目やにや涙にウイルスが多く含まれ、それが手指を介してドアノブ・タオル・スマートフォンなどに付き、別の人がその手で目をこすることで広がります。目薬の容器の先が目やにに触れて汚染されることもあります。
見た目の充血が治まってきても、しばらくはウイルスが排出されることがあり、「もう治ったからうつさない」とは言い切れません。だからこそ、後でご紹介する家庭内の予防と、学校・職場を休む期間の判断が重要になってきます。
学校・職場での対応と出席停止
「うちの子、いつから学校に行けますか」というご相談は、このページの中でも特に多くいただきます。流行性角結膜炎と咽頭結膜熱は、いずれも学校保健安全法で「学校において予防すべき感染症」に定められています。お子さんがかかった場合、他の子にうつすおそれがある間は登校・登園を控える「出席停止」の対象になりますが、これは罰則ではなく、集団の中で感染が広がるのを防ぐための仕組みです。
登校・登園を再開できる時期の考え方は、2つの病気で異なります。流行性角結膜炎は、決まった日数ではなく「感染のおそれがないと医師が認めるまで」が基準になるため、症状の経過によって休む期間には幅が出ます。咽頭結膜熱は、発熱やのどの痛みなどの主要な症状が消えた後2日を経過するまでが基準です。
職場や大人の場合は、法律で一律に休む期間が決められているわけではありませんが、感染力の強さを考えると、目やにや充血が続く間は出勤や人との接触を控えるのが望ましい対応です。特に医療・介護・保育・飲食など人と近く接する仕事の場合は、職場の規定を確認しておくと安心です。
登園・登校を再開するとき、学校や園から医師の証明書(登校許可証・治癒証明書など)の提出を求められることがあります。当院での証明書発行の可否・書式・費用については、受診の際にご案内します。学校ごとに指定の書式がある場合は、受診の際に学校から渡された用紙をお持ちいただくとスムーズです。
検査と診断
「見ただけで分かるものなのですか」と聞かれることもありますが、診断はまず、細隙灯顕微鏡で目の充血や結膜の状態、黒目への炎症の有無を詳しく観察し、症状の経過や周囲での流行状況も合わせて総合的に判断します。アデノウイルスかどうかを短時間で調べる抗原迅速検査(結膜をこすって検体を採る検査)もあり、他の結膜炎との区別や出席停止の判断材料になります。当院での抗原迅速検査の実施可否については、受診の際にご案内します。
なお、迅速検査は陽性であればアデノウイルス感染の確認に役立ちますが、結果の出方には個人差があり、陰性であってもアデノウイルス感染を完全には否定できません。検査結果だけでなく、症状の経過も合わせて診断していきます。
治療の考え方
「特効薬で早く治したい」と思われる方も多いのですが、アデノウイルスそのものを直接やっつける薬は、現在のところありません。治療は、炎症を抑える点眼薬や、症状によっては細菌の混合感染を防ぐ点眼薬を用いながら、体の免疫がウイルスを排除するのを支える対症療法が中心になります。黒目に濁りが残らないよう、炎症の程度に応じた点眼を続けることが治療のかなめです。
治るまでの期間は症状の強さによって数週間に及ぶこともあり、個人差があります。自己判断で市販の目薬に切り替えたり、途中で治療をやめたりせず、経過を診ながら治療を続けていきましょう。
家庭内での感染予防
「家族にうつさないためにどうすればいいですか」というご相談もよくいただきます。次のポイントを実践すると、うつるリスクを大きく下げられます。
タオルやハンカチ、枕カバーの共用をやめ、患者さん専用のものを使いましょう。洗濯自体は分けなくても大丈夫ですが、拭いたタオルを家族が使い回さないことが肝心です。
目やにや涙に触れたあと、点眼したあとは、石けんで丁寧に手を洗います。看病するご家族も、本人と同じように手洗いを徹底しましょう。
目やにはティッシュなど使い捨てのもので拭き取り、すぐに捨てます。目をこすらない、触らないことも意識しておきたいポイントです。
お風呂は患者さんが最後に入るようにし、ドアノブや蛇口、スイッチなど手が触れる場所をこまめに拭くと、家庭内での広がりを抑えられます。
よくあるご質問
どちらもアデノウイルスが原因ですが、はやり目(流行性角結膜炎)は目の症状が中心で発熱を伴わないことが多く、プール熱(咽頭結膜熱)は発熱とのどの痛みに目の症状が加わるのが特徴です。学校や職場を休む期間の考え方も異なります。
流行性角結膜炎は、感染のおそれがないと医師が認めるまでが目安で、日数は一律ではありません。咽頭結膜熱は、主要な症状が消えた後2日を経過するまでが基準とされています。再開の時期は診察のうえで判断しますので、自己判断せずご相談ください。
証明書の発行可否や書式、費用は、受診の際にご案内します。学校や園から用紙が指定されている場合は、その用紙をお持ちいただくとスムーズです。
タオルの共用をやめ、こまめな手洗いを徹底することが基本です。目やには使い捨てのもので拭き取り、目を触らないよう意識しましょう。入浴を患者さんが最後にする、手が触れる場所を拭くといった工夫も効果的です。
抗原迅速検査は短時間で結果が分かる検査です。ただし陰性でもアデノウイルス感染を完全には否定できないため、症状の経過とあわせて診断します。当院での実施可否は受診の際にご案内します。
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院長 野村 圭子
保有資格・略歴
- 昭和63年 東京女子医科大学卒業・同大学眼科医局入局
- 平成11年 米国ロチェスター大学角膜移植部留学
- 平成13年 東京女子医科大学眼科准講師
- 日本眼科学会専門医
目の充血や目やにが急に強くなった、ご家族にはやり目・プール熱と診断された方がいるといった場合は、周囲にうつさないためにも早めに当院眼科までご相談ください。