慢性便秘症とは
便秘というと、「毎日排便がないこと」だと思われている方がほとんどではないでしょうか。実は、排便のリズムには個人差があり、2〜3日に1回でも、いきまず苦痛なくすっきり出せているなら、それだけで治療が必要になるわけではありません。
反対に、毎日排便があっても、強くいきまないと出ない、出したあともすっきりしない、お腹が張って苦しい。こうした状態が続いて生活に支障が出ているなら、回数にかかわらず慢性便秘症として、一緒に見ていく段階だと考えています。
加齢に伴う排便習慣の変化
年齢を重ねるにつれて、若い頃とは便通が変わってきたと感じる方は少なくありません。腸の動きがゆっくりになる、直腸の感覚が鈍くなる、排便に使う腹筋や骨盤底筋の力が弱くなる、活動量や食事量が減る、飲むお薬が増える。こうした変化がいくつも重なって、排便の習慣は自然と移り変わっていきます。
ですからご高齢の方には、「毎日出さなければ」と気負いすぎるよりも、便の硬さやいきみ、残便感、腹痛、食欲、日々の生活への影響まで含めて、無理のない排便を目指しましょうとお伝えしています。
慢性便秘症の主な原因
便秘の原因として多いのは、食物繊維や水分の不足、運動不足、排便を我慢する習慣、加齢、ストレス、睡眠不足といった生活習慣に関わるものです。ただ、それだけでは説明がつかないこともあり、病気やお薬が背景に隠れているケースも見逃せません。
便秘に関係する主な病気には、次のようなものがあります。
- 糖尿病
- 甲状腺機能低下症
- パーキンソン病
- 脳血管障害
- 慢性腎臓病
お薬では、痛み止め(オピオイドを含む)や抗コリン薬、鉄剤、カルシウム拮抗薬、抗うつ薬、睡眠薬などが便秘に関わることがあります。心当たりのあるお薬があっても、自己判断でやめずに、受診の際はお薬手帳をご持参ください。市販薬やサプリメントも含めて、一緒に確認していきます。
診察の流れと検査
「便秘のことで受診するのは、なんだか気が引ける」という声を耳にすることがありますが、決して珍しいご相談ではありません。診察では、排便回数、便の硬さ、いきみ、残便感、腹痛、腹部膨満、血便の有無、体重の変化、食欲、服薬内容、生活習慣を順番に伺っていきます。
必要に応じて、血液検査、腹部X線、便潜血検査などを行います。検査項目の詳細は当院で行える検査のページでご案内しています。
大腸内視鏡検査を検討すべきサイン
次のような症状や所見がある場合、「いつもの便秘」として様子を見るのは危険です。
- 急に便通が変わった
- 血便がある
- 貧血や体重減少がある
- 強い腹痛を伴う
- 便が細くなった
- 健診などで便潜血が陽性だった
これらに当てはまるときは、便秘の陰に大腸がんや腸閉塞などの病気が隠れていないか確認するため、連携医療機関での大腸内視鏡検査などをご案内しています。
生活習慣の見直し
治療の基本になるのは、生活習慣の見直しです。食事の量を極端に減らさず、野菜、海藻、きのこ、豆類、果物、穀類などから食物繊維を適度に摂っていきます。ただ、食物繊維を急に増やすと、かえってお腹の張りが強くなる方もいるので、体質に合わせた量の調整が必要です。
あわせて、水分をしっかり摂ること、朝食を抜かないこと、規則正しい生活、無理のない運動、排便を我慢しない習慣も大切な要素です。便意がなくても、朝食のあとなど腸が動きやすい時間にトイレに座ってみる。この習慣が、案外役に立つこともあります。
薬物療法
生活習慣を見直しても改善しない場合は、お薬による治療を組み合わせます。便秘のお薬は種類が多く、どれも同じというわけではありません。便の硬さや腸の動き、お腹の症状、年齢、腎機能、他に飲んでいるお薬まで考慮しながら、その方に合ったお薬を選んでいきます。
便を軟らかくする薬を中心とした治療
治療の中心になるのは、便を軟らかくする浸透圧性下剤、腸管内の水分分泌を促すお薬、胆汁酸トランスポーター阻害薬、消化管の動きを整えるお薬、漢方薬などです。腸を無理やり動かすのではなく、便の状態を整えて、自然な排便を促していくのが基本の考え方です。
浸透圧性下剤の代表である酸化マグネシウムはよく使われるお薬ですが、ご高齢の方や腎機能が低下している方では、高マグネシウム血症に注意が必要です。
当院では、定期的な採血で数値を確認しながら使用しています。腎機能が気になる方はCKD(慢性腎臓病)のページも参考になります。
刺激性下剤との付き合い方
市販薬にも含まれる刺激性下剤には、少し注意が必要です。センナ、センノシド、ピコスルファートなどは、短期的には排便を促してくれます。ただ、毎日のように長く使い続けると、腹痛や下痢、脱水、電解質異常を起こしたり、お薬に頼らないと出なくなってしまったりすることがあります。
刺激性下剤は、「必要なときに最小限使うお薬」というのが基本の位置づけです。長く連用している方は、自己判断で増量せず、一度ご相談ください。便を軟らかくするお薬をベースに置きながら、刺激性下剤は頓用へと切り替えていく道筋を、一緒に考えていきます。
| 種類 | 主な薬 | 使い方の考え方 |
|---|---|---|
| 非刺激性下剤(治療のベース) | 酸化マグネシウムなどの浸透圧性下剤、腸管内の水分分泌を促す薬、胆汁酸トランスポーター阻害薬 など | 便を軟らかくして自然な排便を促す薬。便の硬さを見ながら量を調整し、継続して使います |
| 刺激性下剤(頓用) | センナ、センノシド、ピコスルファート など | 腸を直接刺激して排便を促す薬。必要な時に最小限だけ使い、連日の長期使用は避けます |
治療の目標と当院の方針
慢性便秘症の治療で目指すのは、「毎日出すこと」だけではありません。苦痛なく排便できること、過度ないきみや残便感を減らすこと、お腹の張りや不快感を和らげること、そして生活の質(QOL)を保つこと。これらすべてが治療の目標です。
当院では、年齢、生活習慣、服薬内容、腎機能、基礎疾患を確認しながら、生活指導とお薬による治療を組み合わせ、市販の刺激性下剤に頼りすぎない便秘治療を行っています。長年の便秘を「体質だから仕方ない」と諦めている方も、一度ご相談いただければと思います。
よくあるご質問
回数だけで決まるものではありません。2〜3日に1回でも、苦痛なくすっきり出せていれば、治療の必要がないことも多いです。反対に、毎日出ていても強いいきみや残便感があるなら、慢性便秘症として治療を考えます。生活に支障を感じているかどうかが、ひとつの目安になります。
センナなどの刺激性下剤を長く使い続けている場合、急にやめるとかえって出にくくなることがあります。便を軟らかくするお薬をベースにしながら、少しずつ頓用へ切り替えていくのが基本の考え方です。自己判断での増量・中止は避け、現在の使用量が分かるものを持って、一度ご来院いただければと思います。
ご高齢の方や腎機能が低下している方では、高マグネシウム血症という副作用に注意が必要なお薬です。当院では定期的な採血で数値を確認しながら使用しています。長く服用している方は、一度腎機能とあわせて確認してみましょう。
便秘だけでの受診も、もちろん可能です。便秘は生活の質を大きく下げるだけでなく、糖尿病や甲状腺の病気、大腸の病気が隠れていることもあります。特に、急な便通の変化、血便、体重減少を伴う場合は早めに受診してください。
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理事長 野村 敦宣
保有資格・略歴
- 日本医科大学第一内科入局
- 米国ロチェスター大学メディカルセンター循環器研究部留学
- 労働衛生コンサルタント
便秘の背景に、糖尿病や慢性腎臓病などの病気が隠れていることもあります。長引く便秘や気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。
健診で数値の異常を指摘されたことがある方は、CKD(慢性腎臓病)や当院で行える検査のページでも詳しくご紹介しています。