過活動膀胱とは
「急にトイレに行きたくなって、我慢できずに漏れてしまった」というお声をよくお聞きします。過活動膀胱(OAB:Overactive Bladder)は、急に強い尿意をこらえきれなくなる「尿意切迫感」を主な症状とする病気です。多くは、膀胱がまだ十分に尿を溜めきれていない段階で勝手に収縮してしまうことが関係していると考えられています。膀胱には本来、尿を溜める・尿を出すという二つの働きがありますが、このバランスが崩れることで起こります。加齢に伴う膀胱や神経の変化のほか、女性では出産や閉経後のホルモン変化、男性では前立腺肥大症に伴う膀胱への負担が関わっていることがあります。男性で頻尿や尿意切迫感がある場合、前立腺肥大症の症状の一部として現れていることも多く、両方をあわせて確認していきます。「歳のせいだから」と諦めてしまう方が多いのですが、行動療法や内服治療を組み合わせることで、症状を軽くしていける病気です。
主な症状
「トイレが近い」「急に我慢できなくなる」など、症状の現れ方は人によってさまざまです。過活動膀胱で見られる代表的な症状には、次のようなものがあります。
- 尿意切迫感:急に強い尿意をもよおし、我慢するのが難しい
- 昼間頻尿:日中の排尿回数が増える
- 夜間頻尿:夜、排尿のために1回以上目が覚める
- 切迫性尿失禁:尿意切迫感を我慢できずに尿が漏れてしまう
これらの症状がすべて同時にそろうとは限りません。尿意切迫感だけがある方、頻尿はあっても失禁はない方など、組み合わせや程度は人によって異なります。
見逃してはいけないサイン
「これって放っておいても大丈夫かな」と迷ったときに、知っておいていただきたいことがあります。血尿や排尿時の痛み、発熱を伴う場合、急に尿が出なくなった場合(尿閉)は、過活動膀胱ではなく尿路感染症、尿路結石、膀胱がんなど別の病気が隠れている可能性があるサインです。市販薬や様子見で済ませず、早めにご相談ください。
原因
過活動膀胱の原因は一つとは限らず、大きく次のように分けられます。
- 特発性:明らかな原因が特定できないもの。加齢に伴う膀胱や神経の機能変化によることが多い
- 神経因性:脳卒中、パーキンソン病、脊髄の病気など、排尿に関わる神経の障害に伴うもの
- 男性に多いもの:前立腺肥大症に伴う膀胱への負担
- 女性に多いもの:出産や加齢による骨盤底の緩み、閉経後のホルモン変化
原因によって治療の重点が変わるため、症状の内容や経過、持病、服用中のお薬をうかがいながら評価していきます。
症状の程度をはかる質問票
「自分の症状がどのくらい重いのか分からない」という方のために、過活動膀胱の診療ではOABSS(過活動膀胱症状スコア)という質問票を使い、症状の程度を点数化して確認します。
| 質問項目 | 点数の範囲 |
|---|---|
| 朝起きてから寝るまでの排尿回数 | 0〜2点 |
| 夜寝てから朝起きるまでの排尿回数 | 0〜3点 |
| 急な尿意切迫感の頻度 | 0〜5点 |
| 尿意切迫感を我慢できずに尿が漏れる頻度 | 0〜5点 |
点数の合計が高いほど症状が重いと判定され、目安として5点以下は軽症、6〜11点は中等症、12点以上は重症とされています。この点数は、治療を始めた後にどれくらい良くなったかを確認する目安としても使っていきます。
診断の流れ
排尿の回数や尿意切迫感の頻度、失禁の有無、水分摂取量、持病や服用中のお薬をうかがい、OABSSで症状の程度を確認します。
尿路感染症や血尿がないかを確認します。
排尿した後、膀胱の中にどのくらい尿が残っているかを超音波(エコー)で測り、尿閉や排尿障害がないかを確認します。
男性の場合は、前立腺肥大症が症状に関わっていないかもあわせて確認します。
治療法
「一生この症状と付き合っていくのだろうか」と心配される方もいらっしゃいますが、過活動膀胱の治療は行動療法と内服治療を組み合わせて進めていきます。どちらか一方だけで完結するものではなく、生活の中で続けられる行動療法に、症状に応じて内服治療を加えていくのが基本です。
行動療法
骨盤底筋訓練は、尿道や膀胱を支える骨盤底の筋肉を意識的に締めたり緩めたりする運動で、尿意切迫感や軽い尿もれの軽減が期待できます。膀胱訓練は、尿意を感じてもすぐにトイレへ行かず、少しずつ我慢する時間を延ばして膀胱に尿を溜める練習です。「本当に効果があるのか」と半信半疑になる方も多いのですが、どちらも効果が出るまで数週間から数か月程度かかることが多く、根気強く続けることが大切です。
内服治療
行動療法だけでは改善が乏しい場合や、症状が強い場合には、内服治療を検討していきます。
| 薬の種類 | はたらき | 注意したい点 |
|---|---|---|
| 抗コリン薬 | 膀胱の異常な収縮を抑え、尿意切迫感を軽減する | 口の渇き、便秘、まれに尿が出にくくなることがある |
| β3作動薬 | 膀胱の筋肉を弛緩させ、尿を溜められる量を増やす | 抗コリン薬に比べて口の渇き・便秘が出にくいとされる |
「どちらの薬が合うのか」は、他の持病や服用中のお薬、副作用の出やすさによって変わってきます。自己判断で量を変えたり中止したりせず、効果や副作用は次の診察でご相談しながら調整していきます。
よくあるご質問
加齢だけが原因とは限りません。行動療法や内服治療によって症状の改善が期待できる病気なので、年のせいだと我慢を続けず、まずは症状を確認してみましょう。
前立腺肥大症が過活動膀胱の症状を引き起こしていることがあり、両方の症状が重なっている方も少なくありません。前立腺肥大症のページもあわせてご確認ください。
行動療法は効果が出るまで数週間から数か月程度かかることが多く、内服治療も効果の出方には個人差があります。焦らず、一定期間続けたうえで効果を確認していきます。
排尿の回数や時間帯、失禁の有無を数日分メモしておくと、診察がスムーズに進みます。お薬手帳をお持ちの方はご持参ください。
関連ページ
夜間のトイレの回数が増えた、外出時の尿意切迫感が気になるという方は、お気軽にご相談ください。男性で排尿の勢いの低下も気になる場合は、前立腺肥大症のページもあわせてご覧いただければと思います。