気管支喘息とは
気管支喘息は、気道の粘膜に慢性的な炎症が続き、ちょっとした刺激にも敏感に反応しやすくなる病気です。炎症が続くと気道がむくんで狭くなり、咳や「ゼーゼー、ヒューヒュー」といった喘鳴、息苦しさが繰り返し起こります。
風邪、花粉、ハウスダスト、ダニ、たばこの煙、運動、寒暖差、ストレスなど、きっかけになるものは人によってさまざまです。
夜間から明け方にかけて咳き込みやすい、階段を上ると息が切れる、風邪をひくとなかなか咳が抜けない——こうした経験がある方は、一度検査を受けてみることをおすすめします。子どもの頃の喘息が治まっていた方が、大人になってから再び症状が出ることも珍しくありません。
治療を続ける理由(気道リモデリング)
「発作が起きていないから治療をやめてもいい」と思われがちですが、これが喘息治療でいちばん誤解されやすいところです。症状がない時期も気道の炎症は静かに続いていて、そのまま放っておくと気道の壁が厚く硬くなり、元に戻りにくくなってしまいます。これを気道リモデリングと呼びます。
一度リモデリングが進むと、薬を使っても気道が広がりにくくなり、発作のリスクも将来にわたって高いままになってしまいます。だからこそ、症状が落ち着いている時期こそ治療を継続する意味があります。
検査内容
喘息かどうかを見極めるために、いくつかの検査を組み合わせて状態を確認していきます。
咳が出るタイミングや期間、アレルギーの有無、家族歴、生活環境について詳しくお伺いします。
肺炎や結核など、咳の原因になる他の病気がないかを確認します。
息を吐く力や気道の狭さを数値で調べ、喘息特有の気流の制限があるかを確認します。
吐いた息に含まれる一酸化窒素の濃度を測定し、気道のアレルギー性炎症の程度をみます。
アレルギーの原因となっている物質(アレルゲン)を特定し、生活の中での対策に役立てます。
検査についてさらに詳しく知りたい方は、当院で行える検査のページにまとめています。
ACT(Asthma Control Test)による自己評価
ご自身の喘息がどのくらいコントロールできているかを客観的に把握するために、ACT(Asthma Control Test)という質問票を使います。過去4週間について、以下のような項目を振り返っていただきます。
- 仕事や家事、外出がどのくらい制限されたか
- 息切れをどのくらいの頻度で感じたか
- 喘息の症状(咳・喘鳴・息苦しさなど)で夜間に目が覚めたか
- 発作治療薬(吸入薬など)をどのくらいの頻度で使ったか
- 喘息を全体としてどの程度コントロールできていると感じるか
点数化することで「なんとなく調子が悪い」を数値として捉えられ、治療薬の調整にも役立ちます。診察の際に一緒に確認していきますので、ご自身の感覚だけで判断せず、率直に答えていただければと思います。
治療の進め方
長期管理薬
治療の中心になるのは、気道の炎症そのものを抑える長期管理薬です。代表的なのが吸入ステロイド薬で、症状がない時期も毎日継続することで気道リモデリングを防ぎ、発作の起こりにくい状態を維持します。効果を実感しにくいために自己判断で中断してしまう方もいますが、これがいちばん避けたいパターンです。
発作治療薬
咳や息苦しさが強く出たときに、その場で気道を広げて症状を和らげるのが発作治療薬です。速やかに効果が出るぶん、頼りたくなる薬ですが、これはあくまで応急的な対応です。発作治療薬を使う頻度が増えてきたときは、長期管理薬による炎症コントロールが不十分になっているサインですので、我慢せずご相談ください。
| 長期管理薬 | 発作治療薬 | |
|---|---|---|
| 主な薬剤 | 吸入ステロイド薬など | 気管支拡張薬(吸入)など |
| 役割 | 気道の炎症を抑え、発作を予防する | 狭くなった気道をその場で広げる |
| 使うタイミング | 症状の有無にかかわらず毎日継続 | 咳・喘鳴・息苦しさが強いとき |
| 使用頻度が増えたとき | 治療の見直しが必要なサイン | 医師にご相談を |
感染予防とワクチン
風邪やインフルエンザなどの感染症は、喘息発作の大きなきっかけになります。日頃からの感染予防が発作予防にもつながりますので、以下のような対策を心がけましょう。
- 季節性インフルエンザワクチンの接種
- 肺炎球菌ワクチンの接種(対象年齢の方)
- 手洗い・うがいの徹底
- 禁煙、受動喫煙の回避
ワクチンの接種時期や対象については、診察の際にお気軽にお尋ねいただけます。
緊急受診が必要な症状
発作治療薬を使っても息苦しさが改善しない、会話が続けられないほど息が切れる、唇や爪の色が悪い、横になれないほど苦しい——こうした症状があるときは様子を見ずに救急受診してください。
夜間・休日で当院が対応できない時間帯は、地域の救急医療機関を受診いただくか、救急要請を検討しましょう。
よくあるご質問
はい、続けていただく必要があります。症状がない時期も気道の炎症は続いており、治療を中断すると気道リモデリングが進んで発作のリスクが高まります。自己判断でやめず、必ず医師の指示に従いましょう。
咳が3週間以上続く場合は、喘息を含めた何らかの原因が隠れている可能性があります。長引く咳が気になる方は、一度検査を受けることをおすすめします。
あります。小児喘息が治まったように見えても、気道の敏感さが残っていて、大人になってから風邪や環境の変化をきっかけに再び症状が出ることは珍しくありません。心当たりのある方はご相談ください。
発作治療薬を使う頻度が増えるのは、気道の炎症コントロールが不十分になっているサインです。そのまま様子を見るのではなく、治療内容の見直しが必要な場合がありますので、早めのご相談をおすすめします。
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理事長 野村 敦宣
保有資格・略歴
- 日本医科大学第一内科入局
- 米国ロチェスター大学メディカルセンター循環器研究部留学
- 労働衛生コンサルタント
夜間や早朝の咳、繰り返す息苦しさが気になる方は、症状がない時期でも一度ご相談ください。早めの検査と治療の継続が、将来の発作予防につながります。