かぜ症候群の症状と原因
熱っぽい、のどが痛い、鼻が詰まる――「これって風邪かな」と迷いながら来院される方はとても多いです。かぜ症候群は、鼻・のど・気管支など上気道を中心に炎症が起こる病気の総称です。発熱、咳、のどの痛み、鼻水・鼻づまり、痰のほか、頭痛、倦怠感、関節痛を伴うこともあります。
ほとんどはウイルスが原因で、特別な治療をしなくても数日から1週間ほどで良くなっていきます。
ただ、同じような症状で始まりながら、実は別の病気ということも珍しくありません。インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症、溶連菌感染症、アデノウイルス感染症、肺炎、気管支喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の悪化――「ただの風邪」の顔をして受診される方の中に、こうした病気が隠れていることがあります。診察で見極めることを大切にしています。
発熱・感染症が疑われる場合の受診方法
熱があるとき、このまま来院していいものか迷う方は少なくありません。次のいずれかに当てはまる場合は、来院前にお電話でご連絡ください。
- 発熱のある方
- インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症、麻疹(はしか)、風疹、水痘(水ぼうそう)などの感染症が疑われる方
- 上記のような感染症の方と接触があった方
特に麻疹や水痘は感染力が非常に強く、同じ空間にいるだけで他の患者さんにうつるおそれがあります。事前に一本お電話をいただくだけで、院内感染のリスクをぐっと減らすことができます。
まずはお電話で、症状や発症した時期、まわりの流行状況、ご家族や職場で同じような症状の方がいないかを伺います。
伺った内容をもとに、受診していただく時間や待機していただく場所、院内での動線をお伝えします。
マスクを着用してご来院いただき、受付でも症状をお伝えいただければと思います。
一般診療の患者さんとの接触をできるだけ減らせるよう配慮しながら、診察と必要な検査を行います。
当院の診察と検査
「風邪ですね」のひと言だけで診察を終わらせることはしません。のどや鼻の中を診て、聴診器で胸の音を確認し、のどの赤みや扁桃の腫れ・膿の有無、鼻の中の状態、呼吸の音や喘鳴、酸素飽和度、全身の様子を合わせて診ていきます。
こうした所見から、上気道炎なのか、気管支炎、肺炎、喘息発作、COPDの増悪なのかを見分けます。肺炎や心不全が疑われるときは、胸部X線検査を追加することもあります。
院内でその場で結果が分かる検査として、血液一般検査、CRP(炎症反応の数値)、尿一般検査を行っています。感染症の迅速検査は次のとおりです。
- インフルエンザウイルス抗原検査
- 新型コロナウイルス抗原検査
- 溶連菌抗原検査
- アデノウイルス抗原検査
- 水痘ウイルス抗原検査
- 帯状疱疹に対する検査
熱が出たからといって、すぐに全部の検査を行うわけではありません。症状の内容、発症からの時間、まわりでの流行状況、診察での所見を合わせて、本当に必要な検査を選んでいます。
検査をしても原因がはっきりしないこともありますが、治療の方針や感染対策を考えるうえで大切な手がかりになります。検査の詳細は当院で行える検査のページにまとめています。
治療の進め方
治療は、原因や症状に合わせて組み立てます。ウイルス性のかぜに特効薬はなく、解熱鎮痛薬、咳止め、去痰薬、鼻の症状を和らげる薬を使いながら、つらい症状をしのいでいただくのが基本です。体がウイルスに打ち勝つのを、薬で後押しするようなイメージです。
インフルエンザや新型コロナウイルス感染症では、年齢や基礎疾患、重症化しやすいかどうか、発症からの時間を見ながら抗ウイルス薬を使うか判断します。
インフルエンザの薬は発症から48時間以内に飲み始めることが原則とされているため、「様子を見よう」と迷っているうちに、薬を使える時間が過ぎてしまうこともあります。
抗菌薬の適正使用(AMR対策)
「風邪をひいたので抗生物質がほしい」とおっしゃる方は、実はとても多くいらっしゃいます。お気持ちはよく分かるのですが、ウイルスが原因のかぜに抗菌薬(抗生剤)は効きません。
必要のない場面で抗菌薬を使うと、下痢や発疹といった副作用だけでなく、もっと大きな問題が起こります。抗菌薬が効きにくい「薬剤耐性菌」を増やしてしまい、いざ本当に必要になったときに使える薬の選択肢が狭まってしまうのです。
薬剤耐性(AMR)対策は世界規模の課題で、当院でも抗菌薬を不用意には使わないことを診療の方針にしています。
| 主な病気の例 | 抗菌薬の使用 | |
|---|---|---|
| ウイルス感染 | かぜ症候群、インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症 など | 効果がありません。対症療法や抗ウイルス薬で治療します |
| 細菌感染 | 溶連菌感染症、肺炎、細菌性副鼻腔炎、尿路感染症 など | 必要と判断した場合に、適切な種類・量・期間で使用します |
溶連菌感染症や肺炎、細菌性副鼻腔炎、尿路感染症など、細菌が原因と分かった、あるいは強く疑われるときは、抗菌薬をきちんと使います。使うか使わないかは、診察での所見や迅速検査の結果、症状の経過といった根拠をもとに判断していて、どちらの場合もその理由をお伝えしています。
漢方薬による治療
症状に合わせて、漢方薬を使った治療も行っています。発熱の初期に感じる寒気、のどの痛み、咳や痰、鼻水、だるさ、胃腸の不調など、症状の出方とその方の体質を見ながら選びます。すべての方にぴったり合うわけではありませんが、ふだんの対症療法と組み合わせることで、症状が楽になることがあります。
持病やふだん飲んでいるお薬がある方、ご高齢の方、妊娠中の方には、安全性を確かめながらお出ししています。
院内の感染対策
発熱や感染症が疑われる方には、症状に応じて、一般診療の患者さんとは動線を分けて対応しています。院内ではマスクの着用、手指衛生、換気、環境整備を行い、各診察室には空気清浄機のAirDogを設置しています。
感染が疑われる場合でも、必要な診察や検査を受けていただけるよう、患者さん同士が顔を合わせる場面をできるだけ減らす体制を整えています。受診の際は、マスクの着用、来院前のお電話、受付での症状のお申し出にご協力いただけたらと思います。
早めの受診が必要な症状
「いつもの風邪とは違う気がする」と感じたときに、我慢して様子を見ていただきたくない症状があります。次のような場合は、かぜ症候群として様子を見るのは危険です。
- 高熱が続く
- 息苦しい、胸の痛みがある
- 水分が取れない
- 意識がぼんやりする、ぐったりしている
- 強い頭痛や首の硬さがある
- 発疹を伴う
- 血痰が出る
- 酸素飽和度が低い
ご高齢の方、糖尿病、心不全、慢性腎臓病、COPD、気管支喘息、免疫を抑えるお薬を使っている方などは、軽い症状から急に悪化することがあります。「いつもより重いかもしれない」と感じた時点で、早めにご相談ください。
よくあるご質問
ウイルスが原因のかぜには抗菌薬は効果がないため、当院では処方しません。不必要な抗菌薬は副作用や薬剤耐性菌の原因になります。溶連菌感染症や肺炎など細菌感染が疑われる場合には、診察と検査の結果に基づいて必要な抗菌薬を処方します。
来院前に、まずお電話ください。症状や発症時期、周囲の流行状況を伺い、受診時間・待機場所・院内での動線をご案内します。特に麻疹(はしか)や水痘(水ぼうそう)が疑われる場合は、院内感染を防ぐため事前のご連絡が非常に重要です。
検査で必ず原因が特定できるわけではありません。発症からの時間や流行状況によって検査の精度や必要性は変わるため、診察所見とあわせて、どの検査をいつ行うかを判断します。検査結果だけでなく、症状の経過も治療方針を決める重要な材料です。
水分と食事が取れていて症状が軽ければ、市販薬で数日様子を見ることも選択肢の一つです。ただし、高熱が続く、息苦しい、水分が取れないといった症状があるときや、糖尿病・心疾患・呼吸器疾患などの基礎疾患がある方は、様子を見ずに受診してください。
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理事長 野村 敦宣
保有資格・略歴
- 日本医科大学第一内科入局
- 米国ロチェスター大学メディカルセンター循環器研究部留学
- 労働衛生コンサルタント
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