逆流性食道炎・胃食道逆流症(GERD)とは
「たかが胸やけ」と思って、市販薬でやり過ごしている方は少なくありません。
胃酸は本来、胃の中で食べ物の消化を助ける強い酸で、胃の粘膜はその胃酸から自分を守る仕組みを持っています。ところが食道には、この防御の仕組みが十分に備わっていません。
胃酸が食道へ逆流する状態が繰り返されると、粘膜に炎症が起きてしまいます。これが逆流性食道炎です。
内視鏡で調べても炎症がはっきり見つからないのに、胸やけや呑酸(どんさん、酸っぱい液がのどや口まで上がってくる感じ)が続く方もいらっしゃいます。こうした状態も含めた病名が、胃食道逆流症(GERD)です。
「検査で異常がなかったから様子を見ましょう」というわけではなく、症状があるなら治療の対象だとお考えください。
食後や横になったときに症状が強くなりやすいので、夜眠れない、食事を楽しめない、仕事に集中できないといった声をよく伺います。日常生活の質(QOL)がじわじわと下がっていく病気ですので、我慢して付き合う必要はありません。
食道の外に現れる症状(長引く咳・のどの違和感)
「咳がずっと止まらなくて、耳鼻科でも内科でも原因がわからなかった」というご相談を受けることがあります。
胃酸の逆流はのどまで及ぶことがあり、のどの違和感、声のかすれ、痰がからむ感じ、長引く咳の原因になっている場合があるのです。8週間以上続く咳(慢性咳嗽)の背景に、実はGERDが隠れていることも少なくありません。
咳止めや吸入薬を使ってもなかなか改善しない咳では、逆流の関与を考える必要があります。
気管支喘息をお持ちの方では、胃酸の逆流が咳や喘息症状を悪化させるきっかけになることもあります。夜間の咳、食後の咳、横になると悪化する咳に心当たりがあれば、GERDとの関連を確認していきましょう。詳しくは慢性咳嗽・長引く咳、気管支喘息のページもあわせてご覧ください。
逆流が起こる主な原因
逆流には、次のようなことが関係しています。
- 食べ過ぎ、脂肪の多い食事
- アルコール、喫煙
- 肥満
- 食後すぐ横になる習慣
- 前かがみの姿勢
- 加齢
- 食道裂孔ヘルニア
このほか、胃の手術を受けた後、妊娠中、一部のお薬が関係することもあります。原因の多くは日々の生活の中にあるものですから、症状が軽いうちでも、長引くときや繰り返すときは、生活習慣とお薬の両方から見直していくことが大切です。
内視鏡検査が必要なサイン
「胸やけくらいで大げさかもしれない」と思う方もいらっしゃるでしょう。典型的な胸やけ・呑酸であれば、まず生活の見直しと胃酸を抑えるお薬で反応をみることがほとんどです。
ただし、次のような症状があるときは、食道がん、胃がん、食道が狭くなる病気、好酸球性食道炎など、別の病気が隠れていないか確認する必要があります。
次のような症状があるときは、我慢せずお伝えください。
- 飲み込みにくさがある
- 体重が減ってきた
- 貧血を指摘された
- 黒色便が出る
- 吐血があった
- 強い胸痛がある
- 薬を使っても改善しない、症状を繰り返す
当院では内視鏡検査を行っていません。難治性の場合やこれらの警告症状がある場合は、連携医療機関での上部消化管内視鏡検査をご案内し、結果に応じて消化器専門医と連携しながら治療を進めていきます。
治療の進め方
治療の柱は大きく2つ、生活習慣の見直しと、胃酸の分泌を抑えるお薬です。症状のタイプによっては、胃の動きを整えるお薬や漢方薬を組み合わせることもあります。
| 治療 | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 生活習慣の改善 | 食事内容・食後の過ごし方・体重・姿勢の見直し | 逆流そのものを減らす |
| 胃酸分泌を抑える薬 | PPI(プロトンポンプ阻害薬)、P-CAB(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー) | 胸やけ・食道炎の改善と再発予防 |
| 補助的な薬 | 消化管運動改善薬、六君子湯などの漢方薬 | 胃もたれ・つかえ感など胃の動きに関係する症状の改善 |
生活習慣の改善(治療の基本)
「薬さえ飲んでいれば大丈夫」と思われがちですが、治療の土台になるのは生活習慣の見直しです。
食べ過ぎを避け、脂肪の多い食事や甘い物、刺激物、アルコール、たばこを控えていきます。食後すぐに横にならないこと、就寝前2〜3時間は食事を控えることも効果があります。
体重が気になる方は、減量そのものが症状の改善につながることも多いです。
夜間や寝ている間の症状が強い方には、上半身を少し高くして眠る方法をお伝えすることがあります。ベルトやお腹を締めつける服装、長時間の前かがみ姿勢も症状を悪化させる原因になりますので、デスクワークや庭仕事で前かがみの姿勢が続く方は、この機会に見直してみましょう。
薬物治療(PPI・P-CAB)
薬による治療の中心は、胃酸の分泌を抑えるお薬です。PPI(プロトンポンプ阻害薬)やP-CAB(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー)を、症状や食道炎の重さに応じて使い分けています。胃酸の分泌をしっかり抑えることで、胸やけが楽になるだけでなく、食道の炎症を治し、再発を防ぐことにもつながります。
症状がよくなった後の進め方も、実は大事なポイントです。再発を繰り返す方や、重い逆流性食道炎がある方には、少ない量で続ける維持療法や、症状が出たときだけ内服する方法(必要時内服)を検討します。
「もう治ったから」と自己判断でやめてしまうと症状がぶり返しやすいので、減らし方・やめ方は診察のたびに一緒に確認しながら決めていきましょう。
補助的な薬(消化管運動改善薬・漢方薬)
胃もたれや食後のつかえ感が気になる方には、胃の動きを助けるお薬を組み合わせることがあります。症状によっては、六君子湯などの漢方薬を使うこともあります。
胃酸を抑えるお薬だけでは十分に良くならないとき、服薬のタイミングや飲み忘れがないか、食事・飲酒・体重・寝るときの姿勢、長引く咳や喘息との関係まで、ひとつずつ確認しながら治療の内容を調整していきます。
当院での診療の流れ
症状の内容、出やすい時間帯、食事や姿勢との関係、長引く咳・喘息症状との関連、今飲んでいるお薬を伺います。
症状の出方や姿勢・食事との関係から、逆流が関わっていないか確認します。
生活の見直しとお薬による治療を始め、症状の変化を見ていきます。
改善が乏しいときは、服薬状況や生活面を見直して治療を調整します。難治性の場合や警告症状があるときは、連携医療機関での上部消化管内視鏡検査をご案内します。
よくあるご質問
一時的に楽になっても、逆流を繰り返す状態が続くと食道の炎症が進んでしまうことがあります。市販薬が手放せなくなっている方、症状を繰り返している方は、一度診察で原因と重さを確認してみましょう。
症状と食道炎の程度によって変わります。短期間の内服で落ち着く方もいれば、再発を繰り返す方や重い逆流性食道炎がある方は、少ない量での維持療法や必要時内服を続けることがあります。減らし方・やめ方は、診察のたびに一緒に確認しながら決めていきます。
あります。胃酸の逆流は、のどの違和感、声のかすれ、長引く咳として現れることがあり、胸やけや呑酸が目立たない方も少なくありません。夜間や食後、横になったときに悪化する咳は、逆流が関わっているサインのひとつです。
全員に必要というわけではありません。典型的な症状であれば、まず生活の見直しとお薬による治療で反応をみることがあります。飲み込みにくさ、体重減少、貧血、黒色便、吐血、強い胸痛がある場合や、お薬を使っても改善しない場合は、連携医療機関での上部消化管内視鏡検査が必要です。
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理事長 野村 敦宣
保有資格・略歴
- 日本医科大学第一内科入局
- 米国ロチェスター大学メディカルセンター循環器研究部留学
- 労働衛生コンサルタント
胸やけや呑酸を「体質だから仕方ない」と我慢していませんか。長引く咳やのどの違和感が気になる方は、慢性咳嗽・長引く咳のページもご覧いただき、早めにご相談ください。