睡眠時無呼吸症候群とは

いびきがひどいだけで、わざわざ受診するほどではないのでは、と感じる方は少なくありません。睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間に呼吸が何度も止まったり、浅くなったりする病気です。多くは、眠っている間にのどの空気の通り道が狭くなって起こる閉塞性睡眠時無呼吸というタイプです。

大きないびき、睡眠中に呼吸が止まると言われる、日中の眠気、起床時の頭痛、熟睡感がない、夜間頻尿、集中力の低下などが代表的な症状ですが、眠気をほとんど自覚しない方もいます。

そうした方は、高血圧や不整脈の検査をきっかけに見つかることも珍しくありません。

見過ごされやすい症状

ご自身の眠っている間の様子は、意外と気づきにくいものです。SASの症状は、本人よりもご家族やパートナーが先に気づくことが少なくありません。次のような症状に心当たりがあれば、一度確認しておくと安心です。

いびきや日中の眠気は「体質だから」「年齢のせい」と受け止められがちな症状です。ただ、運転中や仕事中に強い眠気で居眠りをしてしまう場合は、事故につながる危険もあります。症状を軽く見ずに検査を受けてください。

高血圧・心不全・不整脈への影響

睡眠時無呼吸症候群は、単なるいびきの問題では終わりません。睡眠中に低酸素状態や交感神経の緊張が繰り返されることで血圧が上がりやすくなり、高血圧、心房細動、狭心症、心筋梗塞、心不全、脳卒中、糖尿病などとも関わってきます。

SASとの関わり
高血圧複数の降圧薬を使用しても血圧が下がりにくい治療抵抗性高血圧では、睡眠時無呼吸症候群が隠れていることがあります。
うっ血性心不全睡眠中の低酸素と交感神経の緊張が繰り返されることが、心不全の発症・悪化に関わる要因の一つになります。
不整脈(心房細動)心房細動では、カテーテルアブレーションなどの治療後に再発・再燃する背景として睡眠時無呼吸が関係することがあり、心房細動の管理においても評価が重要です。

高血圧症、うっ血性心不全、不整脈で通院中の方は、いびきや日中の眠気を自覚していなくても、治療の効果が上がりにくいときにSASの有無を確認することがあります。

重症度の目安(AHI)

SASの重さは、1時間あたりに呼吸が止まる・浅くなる回数を示すAHI(無呼吸低呼吸指数)という数値で分類します。

AHI(1時間あたりの回数)
軽症5以上15未満
中等症15以上30未満
重症30以上

中等症から重症になるとCPAP治療の対象になることが多く、軽症であっても日中の眠気が強い場合や、高血圧・心不全・不整脈などの持病がある場合は治療を検討します。

検査の流れ

SASが疑われるとき、何をするのか分からないまま検査を受けるのは心細いものです。当院ではご自宅で行える睡眠時無呼吸簡易検査を実施しており、次の順序で進めます。

問診・症状の確認

いびきの有無、呼吸停止の指摘、日中の眠気の程度、睡眠習慣についてお伺いします。

自宅での簡易検査

指先や鼻に取り付ける小型の検査機器をお貸しし、ご自宅でいつも通り眠っていただきながら、呼吸の状態、いびき、酸素飽和度、脈拍などを一晩記録します。

結果説明・重症度の確認

無呼吸・低呼吸の回数や酸素低下の程度からAHIを算出し、重症度と今後の方針を確認します。

精密検査(PSG)

簡易検査で重症の疑いがある場合、結果がはっきりしない場合、他の睡眠障害を含めた詳しい評価が必要な場合は、連携医療機関での終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)をご案内します。PSGでは呼吸だけでなく、脳波、睡眠段階、体位、脚の動きなども含めて詳しく評価します。

治療方針の決定

検査結果をもとに、CPAP治療、マウスピース、生活改善のいずれが適しているかを一緒に確認します。

CPAP治療

CPAPを一生使い続けるのは負担が大きいのでは、と迷う方は少なくありません。中等症以上のSASでは、CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)が標準的な治療です。

就寝時に鼻または鼻と口を覆うマスクを装着し、機器から送られる空気の圧力で気道を広げた状態に保つことで、呼吸の停止や低酸素状態を防ぎます。

毎晩使用を続けることで、いびきや日中の眠気の改善が期待できますが、改善の程度には個人差があります。

CPAP治療は、始めたらそれで終わりではありません。使用時間、マスクの漏れ、残存AHI、眠気、血圧、体重の変化などを定期的に確認しながら、継続できているか、十分な効果が出ているかを一緒に見ていきます。

使い始めの時期はマスクの違和感や圧の設定が合わず、装着が続かないことがよくあります。我慢せずご相談いただければ、マスクの種類やサイズ、圧設定を調整します。

マウスピース・生活改善による対応

CPAPが体に合わない、続けにくいと感じる方には、別の選択肢もあります。軽症のSASや、CPAPの使用が難しい場合には、歯科で作成する睡眠時無呼吸用マウスピース(口腔内装置)による治療を検討することもあります。

扁桃肥大や鼻づまりが強い場合には、耳鼻咽喉科での評価が必要になることもあります。

生活改善だけで症状が十分に軽くならないときは、重症度に応じてCPAPやマウスピースへの変更を検討します。

当院での診療について

当院では、いびきや眠気のある方だけでなく、治療抵抗性高血圧、心房細動、心不全、糖尿病、肥満、夜間頻尿などがある方についても、睡眠時無呼吸症候群が隠れていないかを念頭に置きながら診療しています。

まずは簡易検査で評価し、結果によっては連携医療機関でPSGを実施したうえで、CPAP療法、生活習慣の見直し、専門医療機関との連携を通じて、睡眠の質と生活習慣病・循環器疾患の管理改善を目指します。

早めの受診が必要なサイン

ご家族から睡眠中の呼吸停止を指摘された方、いびきが急に大きくなった方、日中の眠気が強く運転中や仕事中に居眠りをしてしまう方は、様子を見ずに一度ご相談ください。特に居眠り運転の経験がある方には、早めの検査をおすすめします。

よくあるご質問

Q
いびきが大きいだけで、呼吸が止まっている自覚はありません。検査は必要ですか。
A

いびきの大きさと無呼吸の有無は必ずしも一致しません。ご家族から呼吸の止まりを指摘されたことがなくても、日中の眠気や起床時の頭痛があるなら、一度簡易検査で確認することをお勧めします。

Q
自宅での簡易検査はどのようなものですか。
A

指先や鼻に小型のセンサーを取り付け、普段どおりご自宅で眠っていただきながら、呼吸の状態と血中酸素飽和度を一晩記録する検査です。入院の必要はありません。

Q
CPAP治療は一生続ける必要がありますか。
A

体重の減少や生活改善によってAHIが下がり、CPAPが不要になる方もいますが、多くの場合は継続的な使用が必要です。自己判断で中止せず、経過をみながら医師と相談してください。

Q
マスクをつけて眠るのに慣れず、途中で外してしまいます。
A

使い始めの時期はマスクの違和感で装着が続かないことがよくあります。マスクの種類やサイズ、空気圧の設定を調整すると改善する場合が多いため、我慢せずご相談いただければと思います。

Q
精密検査(PSG)はどこで受けられますか。
A

当院での簡易検査の結果、重症の疑いがある場合や詳しい診断が必要な場合は、連携医療機関での終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)をご案内しています。

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理事長 野村 敦宣

内科・循環器科を担当。健診異常や生活習慣病の管理から、専門的な検査・治療が必要な場合の連携医療機関へのご紹介まで、地域のかかりつけ医として対応します。

保有資格・略歴

  • 日本医科大学第一内科入局
  • 米国ロチェスター大学メディカルセンター循環器研究部留学
  • 労働衛生コンサルタント

いびきや日中の眠気が気になる方、高血圧・心不全・不整脈の治療中でSASの評価を受けたことがない方は、次の受診でぜひお聞かせください。関連する高血圧症、うっ血性心不全、不整脈についても、それぞれのページで詳しくご案内しています。