心不全とは

むくみや息切れがあると、これって心不全なのかな、と心配になって受診される方は少なくありません。心不全は一つの病気の名前ではなく、心臓に負担をかける複数の病気が引き起こす状態の総称です。

高血圧、心筋梗塞、狭心症、弁膜症、不整脈、心筋症、糖尿病、慢性腎臓病など、原因になる病気は実にさまざまです。ですから診療では、心不全そのものを診るのと同時に、背景にどんな病気が隠れているのかを一つずつ確認していくところから始めています。

心不全が増えている背景

最近、心不全で通院される方が増えてきたと感じています。歳を重ねるにつれて高血圧や弁膜症、心房細動、腎機能の低下などが増え、心臓に負担がかかりやすくなるためです。日本ではこの先も心不全の患者さんがさらに増えると見込まれていて、こうした状況は「心不全パンデミック」と呼ばれるようになりました。

一度入院すると体力や生活の機能が落ちやすく、退院後にまた入院を繰り返してしまう方も珍しくありません。発症してから治療するだけでなく、心不全にならないための予防と、悪くならないための継続的な管理、この両方を大切にしたいと考えています。

心不全の進行段階

心不全は、ある日突然始まるわけではなく、段階を踏んで進んでいきます。まだ症状のない段階から、次のように整理できます。

Stage A(危険因子はあるが心臓に異常なし)Stage B(心臓に異常はあるが症状なし)
該当する状態高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、慢性腎臓病、喫煙、睡眠時無呼吸症候群、冠動脈疾患の危険因子など心肥大、心筋梗塞後、弁膜症、心機能低下など、心臓の構造や機能に異常がある状態
自覚症状なしなし
この時期に行うこと血圧・血糖・脂質・体重の管理、禁煙、節酒、運動習慣を整える心電図、胸部X線、BNP・NT-proBNP、心エコーなどで早期に変化を見つけ、原因疾患を治療する

Stage Aの段階では、まだ症状がなくても、血圧・血糖・脂質・体重の管理や禁煙、節酒、運動習慣を整えていくことが、将来の心不全予防につながります。Stage Bも自覚症状はほとんどありませんが、検査で早めに変化を見つけて、原因になっている病気を治療していくことが大切な時期です。

心不全の症状

このむくみや息切れ、心不全のサインなのだろうかと不安に思って来院される方も多くいらっしゃいます。心不全が進むと、次のような症状が現れます。

高齢の方は典型的な症状がはっきり出ないこともあり、「歩ける距離が短くなった」「なんとなく元気がない」「食事の量が減った」というかたちで気づかれることもあります。

数日で体重が2kg以上増えた、むくみが急に強くなった、安静にしていても息苦しい、夜間に横になれない場合は、心不全が悪化しているサインです。様子を見ず、早めにご連絡ください。

検査と心不全の病型

ご心配な症状があるときは、胸部X線や心電図、血液検査に加えて、心臓への負担の程度を示すBNPまたはNT-proBNP、腎機能、電解質、貧血の有無を確認していきます。心臓超音波検査(心エコー)では、心臓の収縮力や拡張機能、心肥大、弁膜症の有無、肺高血圧、心房・心室の大きさを一つずつ見ていきます。

心不全にはいくつかのタイプがあり、左室駆出率が低下したタイプ、保たれているタイプ、中間型、治療によって改善したタイプなどに分かれます。どのタイプかによって治療方針が変わってくるので、検査結果を見ながら方針を決めていきます。検査項目の詳細は当院で行える検査のページもご覧ください。

治療の進め方

治療の基本は、まず原因になっている病気をきちんと管理することです。高血圧、糖尿病、脂質異常症、狭心症、心房細動、弁膜症、慢性腎臓病、睡眠時無呼吸症候群など、心臓に負担をかけている病気を一つずつ治療していきます。

お薬については、むくみや息切れを楽にする利尿薬に加えて、心臓を保護し心不全の進行や再入院を防ぐお薬を、病状に応じて組み合わせます。

左室駆出率が低下した心不全では、ACE阻害薬、ARB、ARNI、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬、SGLT2阻害薬などを使うことが多く、左室駆出率が保たれた心不全でも、体液管理や血圧管理、心房細動、腎機能、肥満、糖尿病などのコントロールが治療の柱になります。

日常生活での自己管理

日常生活で何に気をつければいいのか、不安に思われる方も多いのではないでしょうか。心不全では、入院と退院を繰り返さないための毎日のセルフチェックが、お薬による治療と同じくらい大切です。次のことを日々確認してみてください。

薬の飲み忘れや過労、感染症、貧血、腎機能の悪化、不整脈、痛み止めなどのお薬が、心不全悪化のきっかけになることもあります。

当院の心不全診療

症状が落ち着いてからも、心不全とは長くお付き合いしていく病気です。楽になったからと自己判断でお薬をやめてしまうと、また悪化してしまうことがあります。

心臓リハビリテーションや無理のない範囲での運動は、体力を維持し、再入院を防ぎ、生活の質を保つことにも役立ちます。インフルエンザや肺炎球菌、新型コロナウイルスなどの感染症を防ぐことも、心不全の悪化を防ぐうえで大切な取り組みです。

当院では、心不全になる前のStage Aの段階から高血圧や糖尿病などの生活習慣病の管理をお手伝いし、心不全を発症された後は体重・血圧・症状・腎機能・お薬の効果を継続的に確認しながら、再入院を防ぐ診療を続けています。心臓超音波検査による詳しい評価や、専門的な薬物治療、カテーテル治療、弁膜症治療、デバイス治療などが必要な場合は、循環器の専門医療機関と連携して検討します。

受診の際は、日々測った体重や血圧の記録、お薬手帳をお持ちいただけると、診察がスムーズに進みます。

よくあるご質問

Q
心不全は治る病気ですか?
A

心不全は、原因となる病気や進行の程度によって経過が異なり、治療で症状が落ち着いても、心臓の機能そのものは元通りにならないことも少なくありません。治療の目標は、症状を安定させ入院を防ぎながら、できるだけ普段どおりの生活を続けられるようにすることです。

Q
体重はどのくらいの頻度で測ればよいですか?
A

毎日、できれば朝起きてトイレを済ませた後など、同じ条件で測るのがおすすめです。数日で2kg以上増えた場合は、体に水分がたまり始めているサインのことがあるため、早めにご連絡ください。

Q
水分はどのくらい控えればよいですか?
A

水分制限が必要かどうか、必要な場合にどの程度控えるかは、心不全の重症度や腎機能によって異なります。自己判断で極端に水分を減らすとかえって体調を崩すことがあるため、必ず医師の指示に従ってください。

Q
心臓リハビリテーションとは何ですか?
A

運動療法や生活指導を通じて、心臓に負担をかけすぎない範囲で体力を維持し、再入院を防ぐことを目的とした取り組みで、当院では病状に応じて運動の目安をご案内しています。

Q
症状がなくても通院は必要ですか?
A

Stage AやStage Bの段階では自覚症状がないことがほとんどですが、この時期に高血圧や糖尿病などの管理を続けることが、将来の心不全発症を防ぐことにつながります。健診で心臓の異常を指摘された方は、症状がなくても定期的な受診を続けてください。

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理事長 野村 敦宣

内科・循環器科を担当。健診異常や生活習慣病の管理から、専門的な検査・治療が必要な場合の連携医療機関へのご紹介まで、地域のかかりつけ医として対応します。

保有資格・略歴

  • 日本医科大学第一内科入局
  • 米国ロチェスター大学メディカルセンター循環器研究部留学
  • 労働衛生コンサルタント

息切れやむくみが続く、体重が急に増えたなど気になる変化があれば、お気軽にご相談ください。

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